“All Summer Long” (1964)
映画「アメリカン・グラフィティ」を初めて見たのは、高校1年生か2年生の時だったと思います。ずっと見たいと思っていた映画だったので、テレビで放映されるのを心待ちにしていました。もちろんビデオに録画して何度も見ました。1950年代、60年代初頭のアメリカの女の子のファッションが当時から好きでしたし、音楽はもちろんオールディーズが詰め込まれていて期待以上の作品でした。最初に映画を見た後、すぐにサントラの2枚組のLPを買いましたが、当時はまだこの映画はビデオ化されていませんでした。後に知った話ですが、この映画と”The Blues Brothers”はたくさんの音楽が使用されているため、権利の関係でビデオ化が遅れたそうです。両作品とも私が大学生の時に、ようやくビデオ化されたと記憶しています。
映画の中ではたくさん有名ないい曲が使われていましたが、実は私の中でいちばん印象に残った曲がビーチ・ボーイズ The Beach BoysのAll Summer Longです。ラストシーン、主人公のひとり(リチャード・ドレイファス)が飛行機で旅立っていき、その飛行機が青い空をバックに小さくなっていくと同時に、青い画面にエンドロールが始まるのですが、その後ろで流れているのがAll Summer Longです。映画の設定は1962年で、この曲は1964年の発表ですので、本編に使用されていないのは正しい選択かもしれません。実はビーチ・ボーイズの曲は、もう1曲Surfin’ Safariが使用されているのですが、あんまり印象がなく、とにかくAll Summer Longが大好きでした。夏の終わりのさわやかな曲。今でも、もちろん大好きな1曲です。
14歳からビートルズを聴き始めた私は、LPを集めるのと同時に、ビートルズについて書かれた本もむさぼるように読んでいました。それらの本には、必ずといっていいほどビーチ・ボーイズについても大なり小なり触れてあり、もちろんBack in the U.S.S.R.がビーチ・ボーイズのパロディであることも知っていました。そしてついに、高校2年生の終わりころ、夏に向けて彼らのベスト盤”Endless Summer”を入手しました。サーフィンの歌もよかったし、In My Room、The Warmth of the Sunなどのバラード、WendyやDon’t Worry Babyもその頃から好きでした。後に社会人になり、ビーチ・ボーイズとブライアン・ウィルソンについて知れば知るほど、彼らのことをますます好きになっていきます。
LAで私はSouth Bayと呼ばれるエリアに住んでいましたが、South Bayに住んでいるとビーチ・ボーイズをとても身近に感じることができました。South Bayというのはざっくり言うと、ロサンゼルス国際空港より南の地域、Long Beachとの境界より北のエリアを指します(Santa MonicaやLong Beachは含まれません)。ビーチ・ボーイズのアルバムに”Hawthorne, CA”というのがありますが、Hawthorneはウィルソン兄弟の自宅があった街です。また、2017年までアメリカのトヨタの本社があり、今でも多くの日系企業が集まっているため日本人の多く住むTorrance、海沿いのManhattan、Hermosa、Redondoのbeach citiesもSouth Bayに含まれます。まず、私が住んでいたRedondo Beachは、Surfin’ U.S.A.の歌詞に登場する街です。それからLAに住んでみて初めてわかったことですが、同じくSurfin’ U.S.A.の♫all over ManhattanはNYのことではなく、Manhattan Beach (高級住宅街です!)のことだったのですね。なんでNYでサーフィンなんだろう、と思っていた長年の疑問が解けたのでした。空港に近い順にManhattan Beach、Hermosa Beach、Redondo Beachと並んでいて、Manhattan Beachは確かにサーフィンをする人が多かったです。 余談ですが、「ビバリーヒルズ青春白書」に出てくるビーチ・アパートはHermosa BeachとManhattan Beachの境界のHermosa側にありました。また、アメリカに移ってすぐ3か月だけ暮らしたTorranceのアパートの近くにEl Camino Collegeというコミュニティ・カレッジがあったのですが、そこにはブライアン・ウィルソンとアル・ジャーディンが通っていたそうです。アルバムのタイトルにもなったHawthorneは正直、現在では決して治安がいいとは言えない街ですが、おそらく昔は白人のミドルクラスが多く暮らす地域だったのでしょう。ジョージ・ハリスンの奥様、オリヴィアさんもHawthorneのご出身ですね。ウィルソン兄弟の自宅があった場所は、残念ながら空港から東へ延びる105フリーウェイが建設される時になくなってしまったようで、今はモニュメントが立っています。ここで注目すべきなのは、Hawthorneは海に面していないこと!地名にもbeachが入っていません。あのお家があった場所からでしたら、ビーチに出るのに車で10-15分は軽くかかったと思います。私の勝手な想像かもしれませんが、ビーチ・ボーイズの歌だと、目の前はすぐ海、あるいは歩いてすぐビーチみたいなイメージだったので意外でした。さすが、メンバーの中で本当のサーファーはデニス・ウィルソンだけだったというのも納得できます。ブライアンなんかどう考えてもスポーツ、サーフィンなんてしなさそうですものね。芸術家タイプの彼は、お家に籠ってピアノを弾いているほうが似合っている感じです。
一度Long Beachでブライアンのコンサートを見たことがあるのですが、Hawaiiを演奏する前に、ブライアンがDo you wanna go to Torrance?ってまたローカルなジョークを言い出し、観客はもちろんNo! 確かそのあとIrvineだかオレンジ・カウンティのどこかの街を言った後に、ようやくDo you wanna go to Hawaii? となり、観客がYeah!と応えて、やっと曲が始まるという、ちょっとお茶目なブライアンを見た気がしました。最近、ブライアンがまた日本に来てくれないかなと毎日のように考えています。最後に来てくれたのがちょうど3年前の4月ですので、そろそろまた生ブライアン+素晴らしいバックバンドの方々を見たいものです。ブライアンについては、また別の機会にいろいろ書きたいと思っています。
ちなみに、今回使用した上のビーチの写真は、私がHermosa Beachのピア(桟橋)から、HermosaとManhattan Beach方面を写したものです。下手な写真ですが、少しでも雰囲気を味わっていただければうれしいです。
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