“Comedia” (1978)
El Cantante = The Singer
このブログを始めてから、意識しなくても忘れていたことをたくさん思いだすようになりました。今日もまた、私の記憶の引き出しのすみっこで、くしゃくしゃと丸まっていたものが突然出てきたように思い出した話です。
2007年のいつ頃かはっきりと思い出せないのですが、El Cantanteという映画を見ました。サルサ・ダンスを習い始めてしばらくして、有名なサルサ・シンガーのエクトル・ラボーの伝記映画で、エクトルの役をマーク・アンソニー Marc Anthonyが演じているというので、興味がわいて見に行くことにしました。しかし私がその映画に気づいた時は、公開からかなり経っていて、上映しているシアターも限られており、ぎりぎり最終日に見ることができました。また、当時会社の友だちがダブルワークでアメリカの大手映画館チェーンのAMCで働いていたため、LA近郊のAMCならどこでも毎週のように無料で映画を見せてもらっていました。ちょうどその最終日は友だちが勤務している映画館で上映されたため、彼女とも話ができてうれしかったです。肝心の映画ですが、エクトル・ラボーのことは知っていましたが、まだサルサ歴が浅かったので、あまり登場人物などもピンときませんでした。かろうじてウィリー・コローンWillie Colónを知っているくらい。ストーリーとしては、プエルトリコからNYにやって来たエクトルはウィリー・コローンと組んでシンガーとして大成功するのですが、やはりお酒やドラッグに溺れ、自殺未遂まで起こして、最後はドラッグの注射針の使いまわしでHIVに感染したせいで、エイズの合併症で46歳で亡くなるというもの。まあ、大成功したミュージシャンにはよくある話かな、というのが正直な感想でした。見終わった後、AMCの友だちにもどうだった?と聞かれて、まあまあかな、と答えたのを覚えています。エクトルの奥様のプチ役を、当時実生活でもマーク・アンソニーの奥様だったジェニファー・ロペス Jennifer Lopezが演じているのは、あんまり違和感がなかったです。
今、もう一度この映画を見たら、当時よりは知識も増えたので、また違う感想になるかもしれません。しかし、エクトル・ラボーがel cantanteと呼ばれ、今も人気があるのは確かに納得がいきます。サルサの先生Marcoからもたくさんエクトル・ラボーのCDを頂きましたし、サルサ・ダンスのクラスの友だちや、一緒にクラブに行っていた人たちに好きなサルサのアーティストは誰かと聞くと、かなりの割合でエクトル・ラボーの名前が返ってきました(他はエル・グラン・コンボ El Gran Comboやビクトル・マヌエル Victor Manuelleの名前をよく聞きました)。芸名のラボーLavoeはフランス語の声という意味の”La Vozから取られたそうで、el cantanteは人々がエクトルにつけた呼び名だそうです。確かに彼は素晴らしいシンガーで、El Cantanteが入っている”Comedia”というアルバムも文句なしにいいアルバムです。でも私にとって、やはりel cantanteはイスマエル・キンターナさんなのです。エクトルに申し訳ないのですが。
私がマーク・アンソニーを知ったのは御多分に漏れず、1999年にヒットした彼にとって初の英語のシングルI Need To Knowでした。以前はスペイン語でレコーディングしていたとは聞いていたのですが、それがサルサとは当時まったく知りませんでした。私はマークがそんなにひどいシンガーだとは思わないのですが、いつもお世話になっているeL Popの記事によると、エディ・パルミエリさんは、マークはいいシンガーだけど、あくまでポップ・サルサのシンガーとして、と仰ってます。端折っていえば、マークは本物のサルサ・シンガーの証である即興(その場で歌詞を作って即興でメロディーをつけて歌う意味らしいです)ができないので、パルミエリさんと共演することはない、とまで仰ってます。なかなか厳しいですね。この偉大なサルサ・シンガー、エクトル・ラボーをマークが演じたことについて、パルミエリさんはどう思っているのかも知りたくなりました。マークが歌っているEl Cantanteも聴き比べてみてください。
コメントを残す